繋ぎゆく者
2009年 12月 10日
その日は12月だというのに初秋を思わせるうららかな陽気で、むしろ初夏のような太陽の光が燦々と降り注ぐ中、夫と私はのんびりとホームセンターへ出かけた。
いつものように予定外の加湿器やら収納キャビネットやらを買い込み、何気ない一日が終わろうとしていた。
自宅マンションに到着して荷物を車から下ろしていると、マンション内の私道にたくさんの人だかりが見える。
マンションのご近所の方々だ。大人も子供も集まって何やら楽しそうにしている様子。
すると見覚えのある一人の婦人が嬉しそうに駆け寄ってきた。
Yさんである。
彼女はこの界隈でペットグッズのお店を営んでいるが犬の保護活動をしている知人が多く、お店で里親捜しのお手伝いなどをしている。
このマンションにも彼女経由で引き取られた犬達がいるし、私の友人宅で幸せな一生を全うしたゴールデンレトリーバーのグーもここ出身である。
「探してたのよ~!ちょっと子犬の写真を撮ってもらいたくて。」
引っ張られるように人だかりの方へ向かう。
するとご近所さん達は一斉に私達を囲み、その子犬のかわいらしさを力説し始めた。
聞けば栃木県の日光でレスキューされた子犬で、今回もYさんのお店で里親が決まり昨日東京にやってきたのだが、なんとドタキャンを食らってしまい行く当てがなくなってしまったという。(思っていたより大きかった、というような理由だったようだ)
日光の保護元も保護した犬達がもういっぱいいっぱいで、できればこのままこちらで里親を探したいらしい。
これまでも何度かYさんに頼まれて里親募集中の犬達の写真を撮ってネットに公開するなどのお手伝いをしていたので、今回もそれらをお願いしたいと。
そんな話を聞いているとお店のロゴが印字された小振りのライトバンからYさんが小さな子犬を抱いて出てきた。
「かわいいでしょ~?と〜ってもイイコなのよ、ちょっと抱いてみて!」
まずは夫が抱かされる。
夫の腕の中で妙に落ち着いた表情でこちらを見つめる子犬を、私は写真に撮った。
“里親募集中”とネットに載せるためだ。
たくさんの人間にワーワー騒がれて触られても怯えることなく、興奮することもなくただ静かに不思議そうに佇むその姿は私に誰かを思い起こさせた。
色も違うし見た目が似ていると言うわけでもないのに、その眼差しに、頼りないながらもしっかりと自分の世界を持っているかつてのメルモの姿が重なり合う。
「どうかしら~、かわいいわよ~!」
ご近所さん達は口々に
「引き取りたいけど、ウチはもう2頭いるからダメなのよ〜」
「ウチも子供が小さいから…」
「年老いた猫がいるからムリかなぁ。でもかわいいなぁ」
Yさんは生憎今お店がいっぱいで今夜だけでもどこかに預かってほしいと言う。
「いや、ウチはまだムリです…。」
やっとの思いで断るが、それじゃ、とその場を後にすることができない。
うだうだとその場にとどまり、結局半ば強引に一晩だけでも預かって、と託されてしまった。
戸惑いながらも子犬を家に連れて帰る。
家に入り私の腕の中ですっかり落ち着いた様子の子犬を見ていたら急に涙があふれてきた。
なんの涙なのか自分でもよくわからない。
温かく血の通った毛むくじゃらの小さな命を、再びこの手の中に感じる喜び。
それと同時にああ、もうこういう“命”というかたちでメルモはここに存在していないんだという実感。
そのメルモがもしかしたらこの子をここに呼び寄せだのだろうかという戸惑い。
言葉には上手く言い表せない様々な感情が混ざり合い、とめどなく涙が流れた。
嬉しくて、悲しくて。
寂しくて、暖かくて。
そして見ると夫も同じように涙をこぼしていた。
「どうして涙が出てくるのかなぁ」
泣き笑いの二人を、不思議そうに静かな瞳で子犬は見つめていた。
ーー完
と言う訳で、Sunny(サニー)です。 日光からやって来たのでSunny。
太陽いっぱいのSunny。
そしてKリーダーお気に入りの曲、Bobby Hebbの「Sunny」
実際当分犬は飼えないと思ってました。
犬はもちろん大好きだけど、メルモ以外の子が家族になるなんてどうしても考えられなくて。
いつかは飼うかも知れないけれど、とりあえず当分はいいって思っていました。
もしかしたら、そのまま犬のいない生活をずっと続けていたかもしれません。
メルモとの思い出だけを生活の中心にして。
縁とはこういうものなのでしょうかね。
「もう、しょうがないなぁ」
とメルモが私達を心配してコーディネートしてくれたのかも知れません。
そして今日12月10日はメルモの四十九日でした。
四十九日で魂は天国へ昇って行くのだそうですね。
メルモ、所属が天国になっても遠慮せずに毎日来てね。
あなたが選んだ妹だよ。
Sunnyのこと、よろしくね。
いつものように予定外の加湿器やら収納キャビネットやらを買い込み、何気ない一日が終わろうとしていた。
自宅マンションに到着して荷物を車から下ろしていると、マンション内の私道にたくさんの人だかりが見える。
マンションのご近所の方々だ。大人も子供も集まって何やら楽しそうにしている様子。
すると見覚えのある一人の婦人が嬉しそうに駆け寄ってきた。
Yさんである。
彼女はこの界隈でペットグッズのお店を営んでいるが犬の保護活動をしている知人が多く、お店で里親捜しのお手伝いなどをしている。
このマンションにも彼女経由で引き取られた犬達がいるし、私の友人宅で幸せな一生を全うしたゴールデンレトリーバーのグーもここ出身である。
「探してたのよ~!ちょっと子犬の写真を撮ってもらいたくて。」
引っ張られるように人だかりの方へ向かう。
するとご近所さん達は一斉に私達を囲み、その子犬のかわいらしさを力説し始めた。
聞けば栃木県の日光でレスキューされた子犬で、今回もYさんのお店で里親が決まり昨日東京にやってきたのだが、なんとドタキャンを食らってしまい行く当てがなくなってしまったという。(思っていたより大きかった、というような理由だったようだ)
日光の保護元も保護した犬達がもういっぱいいっぱいで、できればこのままこちらで里親を探したいらしい。
これまでも何度かYさんに頼まれて里親募集中の犬達の写真を撮ってネットに公開するなどのお手伝いをしていたので、今回もそれらをお願いしたいと。
そんな話を聞いているとお店のロゴが印字された小振りのライトバンからYさんが小さな子犬を抱いて出てきた。
「かわいいでしょ~?と〜ってもイイコなのよ、ちょっと抱いてみて!」
まずは夫が抱かされる。
夫の腕の中で妙に落ち着いた表情でこちらを見つめる子犬を、私は写真に撮った。
“里親募集中”とネットに載せるためだ。
たくさんの人間にワーワー騒がれて触られても怯えることなく、興奮することもなくただ静かに不思議そうに佇むその姿は私に誰かを思い起こさせた。
色も違うし見た目が似ていると言うわけでもないのに、その眼差しに、頼りないながらもしっかりと自分の世界を持っているかつてのメルモの姿が重なり合う。
「どうかしら~、かわいいわよ~!」
ご近所さん達は口々に
「引き取りたいけど、ウチはもう2頭いるからダメなのよ〜」
「ウチも子供が小さいから…」
「年老いた猫がいるからムリかなぁ。でもかわいいなぁ」
Yさんは生憎今お店がいっぱいで今夜だけでもどこかに預かってほしいと言う。
「いや、ウチはまだムリです…。」
やっとの思いで断るが、それじゃ、とその場を後にすることができない。
うだうだとその場にとどまり、結局半ば強引に一晩だけでも預かって、と託されてしまった。
戸惑いながらも子犬を家に連れて帰る。
家に入り私の腕の中ですっかり落ち着いた様子の子犬を見ていたら急に涙があふれてきた。
なんの涙なのか自分でもよくわからない。
温かく血の通った毛むくじゃらの小さな命を、再びこの手の中に感じる喜び。
それと同時にああ、もうこういう“命”というかたちでメルモはここに存在していないんだという実感。
そのメルモがもしかしたらこの子をここに呼び寄せだのだろうかという戸惑い。
言葉には上手く言い表せない様々な感情が混ざり合い、とめどなく涙が流れた。
嬉しくて、悲しくて。
寂しくて、暖かくて。
そして見ると夫も同じように涙をこぼしていた。
「どうして涙が出てくるのかなぁ」
泣き笑いの二人を、不思議そうに静かな瞳で子犬は見つめていた。
ーー完
太陽いっぱいのSunny。
そしてKリーダーお気に入りの曲、Bobby Hebbの「Sunny」
実際当分犬は飼えないと思ってました。
犬はもちろん大好きだけど、メルモ以外の子が家族になるなんてどうしても考えられなくて。
いつかは飼うかも知れないけれど、とりあえず当分はいいって思っていました。
もしかしたら、そのまま犬のいない生活をずっと続けていたかもしれません。
メルモとの思い出だけを生活の中心にして。
縁とはこういうものなのでしょうかね。
「もう、しょうがないなぁ」
とメルモが私達を心配してコーディネートしてくれたのかも知れません。
そして今日12月10日はメルモの四十九日でした。
四十九日で魂は天国へ昇って行くのだそうですね。
メルモ、所属が天国になっても遠慮せずに毎日来てね。
あなたが選んだ妹だよ。
Sunnyのこと、よろしくね。
by kura_yang | 2009-12-10 23:43 | メルモ